こんにちは、講師のサキです。
今回は、ネフローゼ症候群についてです。
ネフローゼ症候群は、成人だけでなく小児の問題でも出題されるため、出題されやすい問題です。
ネフローゼ症候群となる機序を理解し、症状をしっかりと理解しましょう。
~はじめに~ ネフローゼ症候群は疾患ではない
ネフローゼ症候群は、何かしらの原疾患により糸球体に障害が起こり、正常であればろ過されないはずのタンパク質が尿として流出するために起こる病態、になります。
ネフローゼ症候群になる原疾患の例は以下のようなものです。
糖尿病性腎症
ループス腎炎
微小変化型ネフローゼ症候群
IgA腎症
アミロイド腎症
etc・・・
『ネフローゼ病』では無いということをまずは覚えておきましょう。
ネフローゼ症候群の診断基準
ネフローゼ症候群は4つの診断基準があり、そのうち①②は必須条件となります。
①タンパク尿:3.5g/日以上
②低アルブミン血症:血漿アルブミンが3.0g/dl以下
③浮腫
④脂質異常症
診断基準を丸覚えするのではなく、機序を理解することが大事です。
ネフローゼ症候群の機序
ネフローゼ症候群の機序を①→②→③④というように、流れで覚えることが重要です。
①タンパク尿
先述のとおり、何かしらの原疾患により糸球体が障害されるため、正常であればろ過されない、タンパク質が尿として流出してしまうため、タンパク尿となります。
②低アルブミン血症
正常であればろ過されずに体内に残るタンパク質が、ろ過されて尿として排出されてしまいます。
そのため、体内のタンパク質(アルブミン)が低下してしまい、低アルブミン血症となります。
③浮腫
アルブミンは血管内に水を引き付ける力(=膠質浸透圧)の源です。
低アルブミン血症になると、血管内に水を引き付ける力が弱まり、間質液に水が貯留してしまうため、浮腫となります。
④高脂血症
アルブミンは肝臓で合成されます。
低アルブミン血症になると、肝臓はアルブミンを合成し、元の量に戻そうとします。
その際、肝臓はコレステロールも同時に合成してしまうため、コレステロール量が多くなるため、高脂血症となります。
ネフローゼ症候群の治療と看護
ネフローゼ症候群の治療と看護は、大きく以下の4つに分けられます。
①保温・安静
②食事療法
③薬物療法
④感染対策
①保温・安静
低体温の状態や、運動のように体を動かすと、体内にあるタンパク質を代謝してエネルギーをつくる異化が亢進してしまいます。
タンパク質を代謝すると、代謝産物が産生され、腎機能に悪影響を与え、ネフローゼ症候群が悪化する可能性があります。
できるだけ、保温・安静を保ち、腎血流を維持することが重要となります。
②食事療法
◉塩分制限:浮腫を軽減するため。
◉高エネルギー食:体内にあるタンパク質の代謝を防ぐため。
◉低たんぱく食:タンパク質の代謝産物が腎臓に悪影響を与えるため。(小児の場合は、あまり制限しない)
③薬物療法
副腎皮質ステロイド薬を用います。
ステロイドの副作用として、満月様顔貌、易感染、肥満、多毛、骨粗しょう症などがあるため、観察が必要です。
④感染対策
低アルブミン血症=低栄養状態であり、免疫力が低いため、易感染の状態です。
加えて、ステロイドの副作用で易感染の状態となっているので、感染対策が重要です。
まとめ
ネフローゼ症候群とは、何かしらの原疾患により、糸球体が障害されたために以下のことが起こる症候群である。
①糸球体からのタンパク質の流出(=タンパク尿)
②体内からタンパク質の流出による低アルブミン血症
③低アルブミン血症(膠質浸透圧の低下)による浮腫
④肝臓でのコレステロール合成量の増加による高脂血症
①~④の治療のため、
保温・安静、食事療法、薬物療法、感染対策が重要である。