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カテゴリー:よく出題される問題

こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、基礎看護分野で難解の分野、消毒と滅菌について、です。

 

滅菌と消毒の違い、滅菌と消毒により死滅する微生物の差などを解説していきます。

 

滅菌と消毒の違い

 

滅菌芽胞を含むすべての微生物を死滅させる処理方法のこと。

 

消毒:生存する微生物の数を減らすために用いられる処理方法のこと。

 

(※芽胞は、細菌内でつくられ、耐久性の高い物質であり、消毒薬に対する抵抗性が強い。)

 

滅菌は、その芽胞をも死滅させる強い方法であることをまずは覚えておいてください。

 

滅菌法の種類

 

種類が多く、全てを細かく覚えるのは難しいので、ポイントを絞って覚えることが大切になります。

 

国家試験に出題されたことのある、加熱滅菌法の2種ガス滅菌法の2種に絞って解説します。

 

加熱滅菌法①:高圧蒸気滅菌法【オートクレーブ】

 

安全、確実、短時間で滅菌ができ、コストも低いため、最も推奨されている滅菌法です。

 

基本的にはオートクレーブで全ての器材を滅菌したいところなのですが、熱や湿度に弱い器材は適用外になってしまいます。

 

適用器材は、金属、リネン類、ガラス製品、シリコン類など、耐熱・耐水性の器材になります。

 

加熱滅菌法②:乾熱滅菌法

 

加熱滅菌法になりますが、オートクレーブと比較すると、時間がかかるため、高温による変形などのリスクがあります。

 

適用器材は、オートクレーブとほぼ同じです。

 

一点メリットを挙げるとすると、水を使用しないため、耐水性のないものでも活用でき、錆びにくいということがあります。

 

ガス滅菌法①:エチレンオキサイドガス滅菌法【EOG滅菌器】

 

オートクレーブができないような熱や湿度に弱い器材を滅菌することが可能です。

 

ただ、有害ガスを用いること、コストが高いこと、滅菌に時間がかかることから、第一選択とはなりません。

 

また、すぐには使用できず、有害ガスを抜くためのエアレーション(空気の入れ替え)をする必要があることもデメリットです。

 

適用器材は、プラスチック製品、ゴム製品、紙、ラテックス製品、などの熱や湿度に弱い器材になります。

 

ガス滅菌法②:過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌法

 

EOG滅菌器と同様、熱や湿度に弱い器材を滅菌することが可能です。

 

②と違う点は、短時間で滅菌ででき、有害ガスも用いないので、すぐに使用できることですが、コストが高いのが難点です。

 

また、滅菌の過程で減圧するので、減圧に耐えられないものも適応外です。

 

適用器材は、②と同様の器材に加え、光学機器、電子機器なども可能です。

 

 

その他:煮沸消毒法

 

消毒法になりますが、煮沸消毒法というものもあります。

 

オートクレープなどの滅菌法では、変質するおそれのあるものに用いられる消毒法です。

 

適用器材は、ガラス製品や金属、ゴム製品などです。

 

消毒薬

 

消毒薬は強い順に並べて解説します。

 

①グルタラール、次亜塩素酸ナトリウム

 

芽胞を含む、すべての微生物を消毒することができます。

 

グルタラールは、人体に強い有害作用があります。

 

次亜塩素酸ナトリウムは、金属に腐食性あります。

 

②ポピドンヨード、エタノール

 

芽胞以外の細菌、ウイルスを消毒することができます。

 

※エタノールはノロウイルスには無効であるため、ノロウイルスに対しての消毒は次亜塩素酸ナトリウムを用います。

 

③オスバン、ヒビテン

 

一般細菌に対してのみ効果を発揮する低水準の消毒薬です。

 

粘膜や創傷の消毒にも用いることが可能です。

 

滅菌法と消毒法の問題

 

第106回国家試験 午前21

 

オートクレーブによる滅菌法はどれか

 

1.乾熱滅菌

2.プラズマ滅菌

3.高圧蒸気滅菌

4.酸化エチレンガス滅菌

 

解答:3

 

まとめ

 

滅菌法は、オートクレープ=高圧蒸気滅菌が最も用いられている。

 

EOG滅菌などのガス滅菌は、オートクレーブの適応外となる、耐熱・耐水性のないものを滅菌する。

 

消毒薬は芽胞まで適応となるか、芽胞は適応外か、粘膜まで使用できるものか、強度の差を重点的に覚える。

 

 

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、意識レベルの評価方法、JCS(ジャパン・コーマ・スケール)とGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)について解説していきます。

 

意識レベルの評価はJCSとGCS

 

意識レベルを評価するのに用いるスケールはどれか?という問いがあれば、基本的にこの2個のどちらかが選択肢にあるはずです。

 

意識レベルの評価=JCS・GCSをまずは覚えておきましょう。

 

JCS=ジャパン・コーマ・スケールの評価方法

 

覚醒に応じて3つのレベルに区分されています。

 

Ⅰ:刺激しなくても覚醒している状態

Ⅱ:刺激すると覚醒する状態

Ⅲ:刺激しても覚醒しない状態

(0:意識清明の状態)

 

各項目をそれぞれ見ていきますが、レベル間がどのように違うのか、ポイントをしっかり覚えるようにしてください。

 

Ⅰ:刺激しなくても覚醒している状態

 

 

Ⅰ-1:いまひとつはっきりしない状態

 

名前や生年月日、日付や場所、年齢など、変化する値においても答えることができるが、意識清明状態ではなく、どことなくボーっとしている状態を指します。

 

Ⅰ-2:見当識障害がある

 

名前や生年月日など、変化のないものは答えられるが、日付や場所など変化する値は答えられない状態

 

Ⅰ-3:名前や生年月日が言えない

 

名前や生年月日など、変化のないものでさえ答えられず、ただ覚醒している状態。

 

 

Ⅱ:刺激をすると覚醒する状態

 

 

Ⅱ-10:普通の呼びかけで覚醒する

 

「山田さん」と肩をポンっとたたくくらいで、容易に目を覚ます状態。

 

Ⅱ-20:大きな声で呼びかけると覚醒する

 

「山田さん!起きて下さい!」と大きな声で、体をゆすりながら呼びかけると目を覚ます状態。痛み刺激は加えていない状態です。

 

Ⅱ-30:痛み刺激を加えるとかろうじて覚醒する

 

呼びかけでは開眼せず、痛み刺激を加えることでどうにか覚醒する状態。痛み刺激を加えることで、どうにか目を開ける、ぎりぎりⅡレベルの状態です。

 

Ⅲ:痛み刺激でも覚醒しない状態

 

 

Ⅲ-100:痛み刺激に対して、払いのけるような動作をする

 

痛み刺激で開眼しないが、痛み刺激から逃げようとしたり、払いのけようとしたりする行動がみられる状態。

 

Ⅲ-200:痛み刺激に対して、顔をしかめるなど、わずかに反応がある状態

 

痛み刺激に対して、わずかに反応がある状態。Ⅲ-300は無反応状態なので、なにか少しでも反応がある状態がⅢ-200となる。

 

Ⅲ-300:痛み刺激に対して、全く反応しない

 

昏睡状態にあり、痛み刺激に対しても無反応。

 

GCS=グラスゴー・コーマ・スケール

 

GCSの評価は、開眼(E)・発語(V)・運動(M)の3つの機能ごとに評価します。

 

開眼(E):4段階、発語(V):5段階、運動機能(M):6段階で評価し、最大15点、最小3点の合計点を算出します。

 

開眼(eyes open) 4段階で評価

 

 

4点:自発的に開眼

3点:呼びかけ(命令)により開眼

2点:痛み刺激により開眼

1点:開眼しない

 

発語(best verbal response) 5段階で評価

 

 

5点:見当識がある

4点:意味のない会話をする

3点:意味のない単語を発する

2点:単語にならない発声のみ

1点:反応なし

 

運動機能(best motor response) 6段階で評価

 

 

6点:命令どおりにできる

5点:痛み刺激の部位がわかる

4点:痛みに手足を引っ込める

3点:四肢屈曲反応(病的屈曲)

2点:伸展反応

1点:反応なし

 

※難解問題の補足※

 

3点は除皮質硬直、2点は除脳硬直の姿勢を指します。

 

◉除皮質硬直:大脳皮質の広範囲の障害を示唆し、痛み刺激により、上肢は強く屈曲し、下肢は強く伸展するような姿勢をとります。

 

→そのため、3点は病的屈曲とされています。

 

◉除脳硬直:中脳や橋を中心とした脳幹の障害を示唆し、痛み刺激により、上下肢ともに強く伸展するような姿勢をとります。

 

→そのため、2点は伸展反応とされています。

 

第112回看護師国家試験で問われたGCS

 

JCSばかり問われていた国家試験で、今回はGCSが問われました。

 

 

午後94の状況設定問題なので、2点分です。

 

GCSの評価基準を覚えていれば解ける問題だったので、評価できるようにしておくことが大事です。

 

 

まとめ

 

◉意識レベルを評価する=JCS・GCS

 

◉JCSは覚醒のレベルに応じて、Ⅰ〜Ⅲに分類され、評価される。

 

◉GCSは発語・言語・運動の3つの機能ごとに評価され、合計点で算出される。

 

※除皮質硬直や除脳硬直は難しいですが、異常反射がM3, M2では出現しているということを頭の片隅に置いておいて下さい。

 

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、ビタミンの種類と機能・ビタミンが欠乏した場合の症状について、解説します。

 

ビタミン〇欠乏になるとどのような症状が出るか、といった問題は国家試験に頻出です。

 

ビタミンの機能を理解し、ビタミンが欠乏した時の症状が分かるようにしていきましょう。

 

そもそもビタミンって何?

 

ビタミンとは、人体の機能を正常に保つため必要な有機化合物になります。

 

三大栄養素に比べると微量ではあるものの、体内ではほとんど合成することができないため、食物から摂取する必要があります。

 

三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)に加え、ビタミン、ミネラルで五大栄養素と呼ばれます。

 

(ミネラルは無機質と呼ばれ、ナトリウム、カルシウム、鉄などがあります)

 

車で例えると、三大栄養素はガソリンで、ビタミンやミネラルはオイル(潤滑油)の役割と例えられます。

 

(車はガソリンがあれば走ることができますが、車の状態を維持するためにはオイルが不可欠なためです。)

 

 

ビタミンの種類

 

現在発見されているビタミンは13種類ほどあります。

 

その中でも、油に溶けやすい脂溶性ビタミンと水に溶けやすい水溶性ビタミンに分けられます。

 

脂溶性ビタミンはD,A,K,Eの4種類だけです。

 

水溶性ビタミンはB1、B2、ナイアシン、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、Cの9種類程度です。

 

 

水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの特徴

 

水溶性のビタミンは水に溶けるため過剰に摂取したとしても、余分な量は尿として排出されます。

 

一方、脂溶性ビタミンは水に溶けないため尿として排出されることがなく、体内では脂肪組織や肝臓等に貯蔵され、毎日少しずつ生体で消費されます。

 

水溶性ビタミンに比べると脂溶性ビタミンの方が蓄積されやすいため、過剰摂取には注意が必要です。

 

脂溶性ビタミンはこれだけ(DAKE)

 

脂溶性ビタミンはDAKEの4種類だけです。

 

 

一つ一つの役割と不足した時の症状を見ていきます。

 

ビタミンD

 

【役割】

カルシウムとリンの吸収を促進し、骨を丈夫にします

 

【不足】

骨軟化症、くる病(小児の骨軟化症)

 

ビタミンDが不足すると、カルシウムを十分に吸収できず、骨軟化症や骨粗鬆症、くる病などになるリスクがあります。

 

ビタミンA

 

【役割】

視細胞での光刺激反応に関与するロドプシンという物質の合成に必要なため、薄暗いところで視力を保ったり、目や皮膚の粘膜を健康に保つ役割があります。

 

【不足】

夜盲症、眼球乾燥

 

ビタミンK

 

【役割】

ビタミンKは血液凝固因子であり、肝臓でのプロトロンビンの生成に必要です。

 

【不足】

血液凝固因子が不足し、出血傾向となる。

 

ビタミンE

 

【役割】

血中のLDLコレステロールの酸化を抑制する、赤血球の破壊を防ぐなどの作用があります。

 

【不足】

赤血球が多く破壊されるため、溶血性貧血となるリスクがある。その他、皮膚炎、血行障害などがある。

 

水溶性ビタミン

 

水溶性ビタミンは、ビタミンB1, B2, B6,B12, C、葉酸、ナイアシン あたりは押さえておきたい内容になります。

 

特に、ビタミンB1, B12, 葉酸、ビタミンCは優先的に覚えておきましょう。

 

 

ビタミンB1

 

【役割】

ビタミンB1はエネルギー産生に必要(ピルビン酸からアセチルCoAへ変換する)。

 

エネルギー代謝に関する記事はこちらからどうぞ。

 

 

【不足】

脚気(足の浮腫、しびれ、動悸など)、ウェルニッケ・コルサコフ症候群(中枢神経が侵される障害)。

 

【補足説明】

ブドウ糖から十分にエネルギーを産生できなくなるため、食欲不振、疲労、だるさなどの症状が現れる。

 

特に脳へのエネルギーが不足すると、脳や神経にも障害を起こすため、ウェルニッケ脳症などが起こる。

 

ビタミンB12

 

【役割】

赤血球の生成を助ける(巨赤芽球性→赤血球に変換に必要なビタミン)

 

【不足】

未熟な赤血球である、巨赤芽球が増加するため、巨赤芽球性貧血となります。

 

【補足】

ビタミンB12の吸収には、胃の壁細胞から分泌される内因子が必要となります。

 

しかし、胃がんなどで胃の切除術をした場合、胃の内因子が欠乏するため、ビタミンB12を吸収することができず、結果として巨赤芽球性貧血となることがあります。

 

そのため、胃切除術後の患者に起こりやすい病態に巨赤芽球性貧血があることを覚えておきましょう。

 

葉酸

 

【役割】

赤血球の生成と核酸の生成

 

【不足】

ビタミンB12と同様、巨赤芽球貧血になります。また、二分脊椎の原因となるため、妊娠初期に葉酸を摂取することが推奨されています。

 

【補足】

葉酸は、ビタミンB群の一種で、ビタミンB9やビタミンMとも呼ばれます。ほうれん草から発見されたので、葉酸と名付けられました。

 

ビタミンC

 

【役割】

コラーゲンの生合成

 

【不足】

壊血病

 

【補足説明】

 

コラーゲンは皮膚や血管などを作っている主要なタンパク質になります。このコラーゲンを作るのに必要なのがビタミンCです。

 

体の中で、ビタミンCが無くなると、血管や皮膚の張りがなくなり、全身のあらゆるところから出血しやすくなります。

 

その他水溶性ビタミン①ビタミンB2、B6

 

市販のビタミン剤に多く含まれる成分で、皮膚炎や口内炎の予防や治療に役立ちます。

 

不足すると、皮膚炎や口内炎のリスクがあります。

 

その他水溶性ビタミン②ナイアシン

 

ナイアシンはビタミンB群の一種で、ビタミンB3とも呼ばれます。

 

様々な酵素の補酵素として働き、摂取不足になるとペラグラになります。

 

ペラグラの主症状は、皮膚炎や下痢、認知機能低下などになります。

 

ビタミンのまとめ

 

・ビタミンは身体の機能を整える潤滑剤のような役割

 

・脂溶性ビタミンはビタミンD, A, K, E

 

・水溶性ビタミンはビタミンB1, B12, 葉酸, ビタミンC(+ビタミンB2, B6, ナイアシン)。

 

ビタミンが欠乏した場合に起こる症状を、各ビタミンの役割から導き出せるように覚えていきましょう。

 

 

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、国家試験に頻出問題の酸塩基平衡について解説します。

 

酸塩基平衡、アシドーシス、アルカローシスという言葉だけで難しく感じる方もいます。

 

しかし、実際は想像以上に簡単なので、苦手意識を持たずに、重要なポイントをしっかりと覚えていきましょう。

 

酸塩基平衡とは

 

酸塩基平衡とは、酸性とアルカリ性のバランスを保とうとする仕組みのことです。

 

体内のpHは7.4±0.05が正常値です。

 

 

しかし、体内の細胞の代謝(食べたご飯を消化吸収する過程など)によって有害な酸性物質の水素イオン(H+)二酸化炭素(CO2)が血液中に放出されますので、体は常に酸性に傾こうとしています。

 

それを、肺と腎臓が協力しながら、水素イオンや二酸化炭素を体外に排出しています。

 

酸塩基平衡に関与しているのは、肺と腎臓となりますので、必ず覚えておいて下さい。

 

そもそもの酸塩基平衡の考え方をもう少し知りたい方はこちらもどうぞ。

 

 

 

呼吸性アシドーシスとアルカローシス

 

その中でも、肺(PaCO2)が関与しているものが呼吸性〇〇と呼ばれます。

 

PaCO2とは、血中の二酸化炭素分圧のことです。

 

(※Ⅰ型呼吸不全とⅡ型呼吸不全の学習でよく出題されますので、覚えておいて下さい。)

 

PaCO2が増加すると酸性(アシドーシス)になり、PaCO2が減少するとアルカリ性(アルカローシス)になります。

 

 

PaCO2が高くなるのは、呼吸不全(COPD、喘息、肺炎、肺がん・・etc)のある患者で、様々な原因疾患があります。

 

一方、PaCO2が減少するのは、過換気症候群しかありません。

 

二酸化炭素を無くす方法は無理に呼吸して、二酸化炭素を吐き出すくらいしか無いからです。

 

◎呼吸性アルカローシス=過呼吸症候群をまずはしっかりと覚えましょう。

○呼吸性アシドーシス=呼吸不全を引き起こす疾患(COPD、喘息、肺炎、肺がん・・etc)はすべて該当すると覚えてください。

 

過換気症候群になるとテタニー症状が出ます。その機序に関してはこちらの記事を参照してください。

 

 

 

代謝性アシドーシスとアルカローシス

 

代謝性には、重炭酸イオン(HCO3-)と水素イオン(H+)が主に関与します。

 

一番難問なのが、代謝性アシドーシスなので、まずは代謝性アルカローシスから覚えていくのが無難です。

 

先述のとおり、体内はアシドーシスになろうとしているので、アルカローシスには無理しないとなりません。

 

 

嘔吐は胃酸(H+などの酸性物質)を無理に排出するので、アルカリ性に傾き、代謝性アルカローシスとなります。

 

(利尿薬を多量に使用すると、無理に酸性物質などを多く排出させるので、利尿薬の投与でも代謝性アルカローシスになることがあります。)

 

そして最後に代謝性アシドーシスです。

 

 

代謝性アシドーシスはH+が増加する以外に原因があるため、しっかり覚えていきましょう。

 

一番シンプルなのは、腎不全です。

 

腎機能の悪化により、腎臓で水素イオンを排出できないため、酸性に傾き、代謝性アシドーシスになるという機序です。

 

次に、下痢です。

 

高度の下痢が続くと、腸液が体外に多量に排出されてしまいます。

 

腸液には、重炭酸イオン(HCO3-)などのアルカリ性物質が多く含まれそれが体外に排出されます。

 

その結果、体内は酸性に傾き、代謝性アシドーシスとなります。

 

代謝性アシドーシスの難問:ケトン体と乳酸

 

H+とHCO3-以外にも、代謝されることで出現する酸性の物質があります。

 

国試に出題されるのは、ケトン体と乳酸です。

 

酸性の物質=ケトン体と乳酸が貯留することでもアシドーシスになります。

 

(ケトアシドーシス、乳酸アシドーシスとも呼ばれます)

 

ケトアシドーシス

 

糖尿病や飢餓状態に陥った場合、体内の細胞のエネルギーが枯渇します。

 

糖尿病の場合は、インスリンが不足するため、血中にグルコースがあったとしても細胞内に取り込むことができません。

 

結果、細胞からすると飢餓状態と同じで、細胞はエネルギー不足となります。

 

そのエネルギー不足を補うため、体内にある脂肪を分解し、エネルギーを生み出しますが、その過程でケトン体が生成されます。

 

糖尿病や飢餓状態にある人は、ケトアシドーシス(=代謝性アシドーシス)となる可能性がありますので、必ず覚えておいてください。

 

糖尿病とケトアシドーシスの関係については、こちらの記事もどうぞ。

 

 

 

乳酸アシドーシス

 

ショックなどの全身の循環不全が原因となり、乳酸が溜まる場合に乳酸アシドーシスとなります。

 

循環不全のため、細胞は酸素不足の状態のまま、エネルギー代謝をしようとしますが、その結果、乳酸は生成されます。

 

(嫌気性代謝でグルコースを代謝した場合と解剖生理では説明されますが、ここでは深くは追及しません)

 

要は、ショック状態などの全身状態が悪い人は、酸素不足のまま無理にエネルギーを生成しようとするため、乳酸が過剰に生成され、乳酸アシドーシス(=代謝性アシドーシス)になる可能性があるということです。

 

最終問題:代償機構

 

酸塩基平衡の最終問題は代償機構です。

 

CO2+H2O ⇄ H2CO3 ⇄ H+ + HCO3-

 

こちらの式を理解して解く問題も出題されることがあります。

 

難問:呼吸性アシドーシスの時に増える物質はどれか?

 

呼吸性アシドーシス=呼吸不全などにより、CO2が増えている状態でしたね。

 

CO2+H2O  H2CO3  H+ + HCO3-

 

そのため、CO2を減らそうと代償機構が働き、双方向の⇄が『→』へ強く動きます。

 

CO2+H2O  H2CO3  H+ + HCO3-

 

H+ + HCO3-の量が増える→腎臓でのH+の排泄量を増やし、酸性になるのを防ぐ。

 

このように、肺が悪いと腎臓が助けるということを「代償機構が働く」と表現します。

 

『代償』を理解できれば、酸塩基平衡は完璧に解けると思いますので、何度も繰り返し意味を読み込んでみてください。

 

(簡単に解説しましたが、とても難しい話です。)

 

質問も受け付けていますので、お気軽にぜひどうぞ。

 

 

 

 

まとめ

 

国家試験対策としては、身体で生じにくいアルカローシスから覚える。

 

次に、呼吸性アシドーシス、最後に代謝性アシドーシスという順に覚える。

 

○呼吸性アルカローシス=過換気症候群

 

○呼吸性アシドーシス=呼吸不全全般(COPD、喘息、肺炎など)

 

○代謝性アルカローシス=嘔吐

 

◉代謝性アシドーシス=難しい

⇒下痢、腎不全、糖尿病(ケトアシドーシス)、ショック(乳酸アシドーシス)

 

難しい範囲ですが、頻出問題であり得点アップにもつながります。

 

苦手意識を持たずにしっかりと理解していきましょう。

 

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、テタニーについてです。

 

低カルシウム血症の時にテタニーになるというのは頻出問題なので、割と覚えているという方も多いのではないでしょうか。

 

ただ、テタニー=低カルシウムとだけ覚えていると、時折応用不足になることがありますので、もう少し深くテタニーについて解説していきたいと思います。

 

テタニーとは

 

テタニーとは、血液中のカルシウム濃度が低下して、末梢神経の興奮性が高まり、筋肉の持続的な硬直をきたすものです。

 

症状としては、口の周りや手足のしびれ、トルソー徴候やクボステック徴候などがあります。

 

手足のしびれ、低カルシウムというワードがきたら、テタニーとすぐに回答に結び付けられることが確かにまずは大事です。

 

ただそれだけでなく、原因などを理解しておくことも重要です。

 

テタニー(低カルシウム血症)の原因となる疾患

 

以下の2つが有名なので、覚えておきましょう。

 

副甲状腺機能低下症

 

副甲状腺ホルモンはパラソルモン(PTH)です。

 

パラソルモンは血中カルシウム濃度を上げる機能があります。

 

副甲状腺の機能が低下し、パラソルモンが減少すると、血中カルシウム濃度を上げることができず、低カルシウム血症になります。

 

補足:パラソルモンが血中カルシウム濃度を上げる機序

 

パラソルモンは破骨細胞の働きを強め、骨吸収を促進することで、血中カルシウムの濃度を上げています。

 

逆は甲状腺ホルモンのカルシトニンで、破骨細胞の働きを弱め、骨吸収を減弱させます。

 

パラソルモンとカルシトニンの関係はしっかりと覚えておいてください。

 

呼吸性アルカローシス(=過呼吸症候群)

 

酸塩基平衡で頻出のアルカローシスも原因の一つになります。

 

血中カルシウム濃度は血液のpHによって左右され、血液がアルカリ性に傾く(アルカローシスになる)と低カルシウム血症を引き起こします。

 

何故、アルカローシスが低カルシウム血症を引き起こすのか

 

血中のカルシウムイオンは血漿蛋白アルブミンと結合する性質を持ちます。

 

体がアルカローシスの状態にある時、アルブミンは負の荷電となり、カルシウムイオンは正の荷電(Ca2+)となりますので、血中のカルシウムイオンが、アルブミンと結合してしまい、血中のカルシウムイオンが減少してしまいます。

 

結果、低カルシウム血症となります。

 

その他(カルシウムの摂取不足、ビタミンD不足)

 

前提として、カルシウム摂取不足の場合も低カルシウム血症となります。

 

また、カルシウムを摂取したとしても、カルシウムが吸収されない場合もあります。

 

カルシウムの吸収障害の一因には、ビタミンDの摂取不足があります。

 

ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあり、ビタミンDが不足してしまうとカルシウムの吸収が阻害されるため、くる病や骨軟化症になります。

 

ビタミンの摂取不足による障害なども頻出なので、しっかりと覚えておきましょう。

 

まとめ

 

・テタニーの症状とは、手足のしびれ、トルソー徴候やクボステック徴候などがある

 

・テタニーを引き起こす原因疾患は、副甲状腺機能低下症やアルカローシスなど、低カルシウム血症となるものである

 

酸塩基平衡、アシドーシスとアルカローシスに関してはこちらの記事にまとめています。

 

 

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、検査時の看護で、絶食が必要な検査や検査後に注意すべき点など、ポイントを絞って解説します。

 

生体検査総論

 

検体を採取するのではなく、身体を直接的に調べる検査を生体検査といいます。

 

例)X線撮影、CT、MRI、血管造影、内視鏡検査、超音波検査、心電図検査、呼吸機能検査、核医学検査、脳波検査、脊髄造影など。

 

生体検査の中でよく出るのは、消化管の生体検査です。

 

消化管の生体検査の種類と特徴

 

消化管の生体検査の種類と特徴

造影検査 内視鏡検査
 

 

上部

上部消化管造影検査 上部消化管内視鏡検査
食事:少量の水分を除いて、検査前12時間は絶飲食とする
造影剤と発泡剤を内服する。

検査中は胃をなるべくふくらませるため、曖気をなるべく我慢する。

検査後は下剤を服用する。

消泡剤を内服して実施。

検査中の体位は左側臥位。

検査後1時間は咽頭麻酔の影響の誤嚥を防止するのため飲食・含嗽は禁。

 

 

下部

注腸造影検査 下部消化管内視鏡検査
食事:検査前日は低残渣食とする。
検査前日に下剤を服用する。

硫酸バリウムを注入し、検査後は下剤を服用する。

検査当日に経口腸管洗浄液を服用する

検査中の迷走神経反射や出血や穿孔、下血に注意する。

 

消化管の造影検査は、上部と下部、造影剤と内視鏡の違いや共通点などを整理して覚えましょう。

 

造影検査の共通点は硫酸バリウムを飲み(注入し)、検査後には下剤を服用します。

 

内視鏡検査は、検査時にカメラを注入するため、上部では咽頭麻酔を行うことによる誤嚥のリスク、下部では迷走神経反射や出血、穿孔などのリスクが伴います。

 

造影剤を用いる検査時の注意点

 

造影剤を用いる検査では、副作用である嘔吐による誤嚥を防ぐため、検査前4時間程度は禁食となっています。

 

一方、造影剤を用いない検査の場合、基本的に食事制限はありません。

 

また、アナフィラキシー様症状やときにはショックなどの重大な副作用が出現することがあるため注意が必要にもなります。

 

その他、造影剤の過敏症や甲状腺疾患のある患者には禁忌であるほか、気管支喘息、腎障害、糖尿病などの患者も副作用が出現しやすいので注意が必要となります。

 

補足:頭部CT・頭部MRI・脳血管造影

 

頭部CTはX線の透過量をコンピューター処理して画像を得る断層撮影法で、侵襲が少ない検査です。

 

X線撮影は2次元撮影ですが、CT撮影は3次元に撮影ができるという違いがあります。

 

頭部MRIは、強力な磁力を使用して画像を得る検査法です。X線は利用しません。

 

脳血管造影は、大腿動脈などからカテーテルを挿入し、大動脈内を上行させ、水溶性ヨード造影剤を注入し、脳血管のエックス線像を得る検査です。

 

この検査により、脳の血管の走行や形状の異常、太さや狭窄部が分かります。

 

脳血管造影検査は造影剤を使用するため、消化器の検査ではありませんが、検査前後の2時間程度の飲食制限があります。

 

検査を行う病院によって、飲食制限の時間は異なってきますので、厳密な時間を問うような問題は出題されていません。

 

検査看護は難しいですが、看護師の立場で必要な知識(検査後の注意点など)を重点的に覚えることが重要になります。