年別:2023年

こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、細胞内と細胞外の水分量を調節に大事な血漿浸透圧について解説します。

 

血漿浸透圧を理解する上で大切なのは、半透膜を介した浸透と溶液の拡散を理解することが重要です。

 

順番に説明していきます。

 

浸透圧と半透膜の関係

 

浸透圧といえば、半透膜を隔てて、2種類の濃度の異なる溶液を放置する絵を思い浮かべるかと思います。

何故、半透膜の勉強をするのかというと、血管や細胞壁は半透膜でできており、半透膜の原理を理解しておくことが、細胞内外の水分の移動を理解することにつながるからです。

 

この半透膜で隔てた2種類の濃度の違う溶液が、どのように混ざり合うのかを理解することが非常に大事になります。

 

半透膜の原理と溶液の拡散

 

①半透膜の原理:半透膜は分子の小さい物質(溶媒など)は通すが、分子の大きい物質(溶質)は通さないという性質を持ちます

 

②拡散:液体に溶けている物質は、濃度の低い方から高い方へ流れる性質を持つ。

 

①②の性質により、浸透圧は生じますので、必ず覚えておいてください。

 

では、半透膜を隔てて2種類の濃度の異なる溶液を放置すると、どうなるのかを考えます。

②の性質により、濃度の高い方へ溶液は流れ濃度を均一にしようとします。

 

①の性質により、半透膜を通って、濃度の高い方に移動できるのは、溶媒(水分子など)になります。

 

半透膜で隔てた濃度の違う2種類の溶液を放置すると・・

濃度の低い溶液の溶媒(水分子など)が、濃度の高い溶液に流れ込むことで濃度を低下させ、半透膜が隔てている2種類の溶液の濃度を均一にします。

 

結果、濃度の高い溶液の方の水分が多くなるため、液面が高くなります。

 

この濃度の低い方から濃度の高い方へ、水が流れようとする圧力(浸透する力)のことを浸透圧といいます。(図中の赤矢印)

 

 

血漿浸透圧とは

 

血漿の浸透圧は285mOsm/Lに保持されています。

 

血漿の浸透圧を決めるのは、細胞外液の90%を占めるNa+イオンの濃度になります。

 

【ポイント】

◉Na+イオン濃度が高くなる=血漿の浸透圧が高くなる=細胞内から細胞外へ水分が流れる

◉Na+イオン濃度が低くなる=血漿の浸透圧が低くなる=細胞外から細胞内へ水分が流れる

 

 

Na+イオン濃度が高くなる=血漿浸透圧が高くなる原因

 

脱水、塩分の多い食事を摂取した場合などに起こりやすいです。

 

汗をかくことで、細胞外にある水分が外に排出されたり、塩分の多い食事を摂取して、細胞外にNa+が増えた場合に、血漿浸透圧は高くなります。

 

血漿浸透圧が高くなると、細胞内から細胞外へ水分が流れ込むため、細胞内が脱水になってしまいます。

 

そのため、血漿浸透圧を低くしよう(ホメオスタシスを維持しよう)として、身体は以下のような反応をします。

 

①細胞内の水が減少するため、口渇を感じて、水分を摂取を促します。

 

抗利尿ホルモン(バソプレシン)を分泌し、腎臓の集合管において、水の再吸収を促進し、細胞外の水分を増やそうとします。

 

血漿浸透圧を低下させるために、血漿中のNa+濃度を下げようと、水分を取り入れようと反応します。

 

血漿浸透圧が低くなる原因

 

大量に汗をかいた後に、水だけを摂取した場合などに起こりやすいです。

 

汗で血漿中のNa+を大量に失ったにも関わらず、水だけを飲んで水分を補給すると、血漿中のNa+濃度が下がり、血漿浸透圧が低下します。

 

すると、細胞外から細胞内へ水分が流入し、細胞内浮腫が生じます。

 

脳細胞に浮腫が生じてしまい、頭痛・嘔気・嘔吐などが出現しますが、これが低張性脱水(Na+欠乏性脱水)となります。

 

大量に汗をかいた時には、スポーツドリンクなど塩分などの電解質を含んだものを摂取することで、血漿浸透圧が低下せずに水分補給ができます。

 

まとめ

 

浸透圧とは、半透膜を隔てた2種類の溶液において、濃度の低い方から濃度の高い方へ、水が流れようとする圧力(浸透する力)のこと

 

血漿の浸透圧を決めるのはNa+イオンの濃度。

 

脱水や塩分を多く摂取すると、血漿中のNa+イオン濃度が上がり、血漿浸透圧が上昇し、細胞内から細胞外へ(濃度の低い方から濃度の高い方へ)水が流れる。

 

血漿浸透圧の上昇に呼応して、バソプレシンが分泌されるのは、血漿に水分を再吸収したいからです。

 

逆に血漿浸透圧が低下すると、細胞外から細胞内へ水が流れるため、細胞内浮腫が生じます。

 

これは、Na+欠乏性脱水の理解につながる知識です。

 

血漿浸透圧を理解すると、身体における水分の調節機構が理解できるようになりますので、苦手意識を持たずに理解していきましょう。

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、心臓の刺激伝導系のしくみ 〜なぜ心臓は拍動するのか:洞房結節と自律神経作用〜について解説します。

 

心臓は、1分間に60-80回程度拍動していますが、無意識に拍動してくれています。

 

なぜ心臓は拍動しているのか、どのように拍動しているのか、そこで立ち止まってしまい、心臓の勉強に入れないという方も目にします。

 

今回は、そのような心臓の拍動に関する疑問を深堀りしていきます。

 

心臓の拍動には刺激伝導系が関与している

 

心臓が規則的なリズムで拍動できるのは、刺激伝導系という電気の流れ道が決まっているからです。

 

刺激伝導系は、洞結節→房室結節→ヒス束→左右脚→プルキンエ線維で構成されています。

 

刺激伝導系の心筋は収縮にほとんど関与しないため、特殊心筋と呼ばれます。

 

(収縮に関与する心筋は固有心筋と呼びます。)

 

なぜ心臓は拍動するのかという疑問の答えは、刺激伝導系の始まりである洞結節にありそうなので、洞結節を詳しく見ていきます。

 

洞結節はなぜ心拍動のリズムを刻むのか

 

洞結節の心筋細胞は、他からの刺激が無く、活動電位が自動的に発生し、心臓の収縮を行っています。

 

他の心筋細胞は洞結節からの電気刺激を受けて収縮しているので、洞結節だけが特殊中の特殊な心筋細胞になります。

 

要するに、洞結節は特殊中の特殊な心筋細胞なので、1分間に60回電気刺激を作り出すと設定されている、ということです。

 

また、洞結節は単調にリズムを刻んでいるのではなく、自律神経の影響を受け、拍動のリズムを変えています。

 

緊張した時など交感神経が優位な時は、1分間に80〜100回と設定が上がり、逆にリラックスした時など副交感神経が優位な時は、1分間に50回と設定が下がったりします。

 

心臓の洞結節は自律神経の影響を受け、拍動する回数を設定し、その回数分の電気信号を作り出しています。

 

どのように拍動は伝わるのか

 

次は洞結節で生じた電気信号がどのように刺激伝導系を伝わっていくかを説明します。

 

静止膜電位(細胞内は-70mVのマイナス荷電となっている)

 

心臓の静止時は、ポンプ機能により、陽イオンを細胞外に流出させるため、細胞内の方がマイナス荷電(-70mV)となっています。

 

刺激が無く、細胞内の方がマイナス荷電になっている状態を静止膜電位と呼びます。

 

チャネル・イオンなど、細胞膜の構造と機能についてはこちらの記事を参照ください。

 

 

 

洞結節から始まる活動電位

 

静止膜電位の状態は、細胞内の方が-70mVのマイナス荷電でしたね。

 

そんな中、洞結節からの電気刺激を受けると、細胞内と細胞外を隔てる細胞膜にあるNa+チャネルが開口します。

 

細胞内と細胞外の濃度勾配により、細胞外から細胞内にNa+イオンが一気に流入します。

 

すると、細胞内にNa+が増加するため、細胞内がプラス荷電にシフトします。

 

細胞内外の分極状態(電位差のある状態)が解消されるため、脱分極と呼びます。

 

その後、K+チャネルが開口し、濃度勾配に従って、細胞内のK+イオンが細胞外へ流出することで、再度細胞内がマイナス側にシフトします。

 

細胞内外が再度分極状態になるため、再分極と呼びます。

 

一連の流れが終わったら、再度洞結節からの電気刺激が起こり、脱分極→再分極が起こり、これが永遠に繰り返されています。

 

洞結節が自律神経の影響で設定した回数分、電気刺激を発生させ、刺激伝導系を電気刺激が流れていきます。

 

また、細胞が脱分極して再分極するまでの電位変化を活動電位と呼びます。

 

このままだと、細胞内にNa+イオンが、細胞外にK+イオンが増えていきそうです。

 

それをナトリウム-カリウムポンプが働き、濃度勾配に逆らって、細胞内にK+イオンを取り込み、細胞外にNa+イオンを流出させます。

 

そのため、元の膜電位の状態=細胞内にはK+が多い状態、細胞外にはNa+が多い状態を維持しておくことができます。

 

 

まとめ

 

なぜ心臓は拍動するのか?

 

①特殊心筋の洞結節が、自律神経の影響を受けながら、1分間に60-80回程度のリズムを刻み、電気刺激を送る。

 

②洞結節から電気刺激を受け取ると、細胞内にNa+イオンが流入し、脱分極が起こる。

 

③その後、K+イオンが細胞外へ入出し、再分極が起こる。

 

洞結節の刺激→脱分極→再分極の繰り返しで、心臓は収縮し、拍動し続けています。

 

 

 

 

 

 

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、細胞膜の構造と機能 〜リン脂質二重構造とチャネル・ポンプの機能〜について解説します。

 

細胞膜の構造は分かりづらいですが、細胞の内と外を隔てる重要な役割を担うため、物質がどのように輸送されていくのか理解しておくことが大事になります。

 

では、一つずつ解説していきます。

 

細胞膜の構造

 

細胞膜はリン脂質二重構造となっており、細胞の内と外を隔てる生体膜となります。

 

(リン脂質二重構造とは、親水性の頭部を細胞の中と外に分け、疎水性の尾部を突き合わせたように並んでいる構造になります。)

 

特徴は、脂質などの脂溶性の物質は膜を通過できるが、水などの水溶性の物質は膜を通過できないということです。

 

そのため、細胞膜にはところどころに膜たんぱく質が埋まっており、通過できない水溶性の物質の輸送を行います。

 

物質の輸送を行うチャネルやポンプは膜たんぱく質の中にあります。

 

【ポイント】

 

①細胞膜はリン脂質二重構造となっており、水溶性の物質は通過できない。

 

②水溶性の物質を通すため、膜たんぱく質の中にチャネルやポンプがある。

 

 

受動輸送はチャネル、能動輸送はポンプ

 

細胞の内外を細胞膜は隔てていますが、細胞膜の内外は常に物質のやりとりをしています。

 

物質の輸送は、受動輸送と能動輸送の2種類に分けられます。

 

受動輸送

 

受動輸送は、エネルギーを使わずに物質が移動する仕組みで、チャネルなどが該当します。

 

物質が濃度の高い方から低い方へ移動(拡散)するため、エネルギーは必要としません。

 

脂溶性の物質はそのまま膜を通過し、水溶性の物質は膜たんぱく質にあるチャネルを通過します。

 

受動輸送は、濃度勾配を利用し、拡散によって物質が移動します。

 

能動輸送

 

能動輸送は、エネルギーを使って、物質を移動させる仕組みで、ポンプが該当します。

 

受動輸送は濃度勾配に従って物質輸送が行われていましたが、能動輸送は濃度勾配に逆らって物質を移動させるので、エネルギーが必要となります。

 

覚えておきたいのは、ナトリウム-カリウムポンプです。

 

濃度に関係なく、エネルギー(ATP1分子)で、Na+3分子を細胞内から細胞外へ、K+2分子を細胞外から細胞内へ移動させます。

 

そのため、細胞外はNa+の濃度が高く、細胞内はK+の濃度が高くなっています。

 

細胞膜にはホルモン受容体もある

 

ホルモンの受容体が細胞膜上にあるのか、細胞質内にあるのか、という問いもよく出題されますので、詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。

 

 

ホルモン受容体は、細胞膜にある膜たんぱく質に存在します。

 

なぜ脂溶性ホルモンの受容体は細胞質内にあり、水溶性ホルモンの受容体は細胞膜上にあるのかも、細胞膜の構造を理解できれば、覚えやすいかと思います。

 

まとめ

 

細胞膜は、リン脂質二重構造となっており、細胞内と外を隔てている。

 

細胞膜は脂溶性の物質は通過できるが、水溶性の物質は通過できない。

 

水溶性の物質は、細胞膜に埋まっている膜たんぱく質の中のチャネルやポンプで、物質の輸送が行われる。

 

チャネルは濃度勾配による物質移動で、受動輸送である。

 

ポンプは濃度勾配に逆らっての物質移動で、エネルギーを使った能動輸送である。

 

細胞膜の構造と機能は難しいですが、覚えると解剖生理全般の理解につながると思いますので、しっかりと理解することをおすすめします。

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、ビタミンB1不足と脚気・代謝性アシドーシスの関連 〜エネルギー代謝を踏まえて解説〜についてです。

 

ビタミン欠乏症のまとめについてはこちらの記事からどうぞ。

 

ビタミン不足になると様々な症状が出現しますが、なぜビタミンB1が不足すると代謝性アシドーシスにつながるのか、いまひとつ関連が分からないという質問を受けます。

 

一言で解答すると、ビタミンB1が不足すると、ピルビン酸をアセチルCoAに変換できず、乳酸に変換されてしまうため、代謝性(乳酸)アシドーシスになる、ということです。

 

では、関連の深い、エネルギー代謝からつなげて解説していきます。

 

エネルギー代謝とは

 

解剖生理学で最初あたりに学ぶことが多いので、苦手意識を持つ方も多い分野です。

 

エネルギー代謝とは、解糖系とTCA回路でATPをつくる反応のことを指しています。

 

解糖系とTCA回路とATPについてそれぞれ説明します。

 

ATPとは

 

ATP=アデノシン三リン酸のことです。

 

アデノシンに3つのリン酸が結合しており、リン酸を一つ切り離すときに、大きなエネルギーを取り出すことができます。

 

体内におけるエネルギーを蓄えておく電池のような存在がATPです。

 

解糖系とは

 

文字通り、糖を解く=グルコースを分解して、ATPを得る反応になります。

 

グルコースをピルビン酸まで分解し、ATPを得る反応です。

 

解糖系は酸素を使わずに、すぐにエネルギーを得ることができますが、少量のATPしか得ることができないというのが特徴です。

 

(※グルコース1分子につき、2分子のATP)

 

酸素を使わないので、無酸素性解糖とも呼ばれます。

 

TCA回路とは(クエン酸回路)

 

先程生成されたピルビン酸を使って、大量のATPを産生する反応になります。

 

ピルビン酸は好気的条件(酸素が十分にある状態)の基では、アセチルCoAに酸化され、アセチルCoAはTCA回路の中で酸化されながら、大量のATPをつくりだします。

 

酸化の反応が回転するように進むため、回路と呼ばれています。

 

(※グルコース1分子につき、36分子のATPが生成されます。)

 

グルコース1分子から、解糖系で2分子、TCA回路で36分子、合計38分子のATPを産生されます。

 

こちらは酸素を使うので、有酸素性解糖とも呼ばれます。

 

ビタミンB1の役割

 

ビタミンB1は、ピルビン酸をアセチルCoAに変換するのに必要なビタミンです

 

ビタミンB1が不足してしまうと、ピルビン酸をアセチルCoAに変換できません。

 

すると、ピルビン酸は酸化されることなく乳酸に変換されてしまいます。

 

結果、ビタミンB1が不足すると、乳酸が蓄積してしまい、代謝性アシドーシスになるということになります。

 

また、先述の通り、アセチルCoAが生成されないと、TCA回路で大量のATPを産生することができず、体内はエネルギー不足に陥ることになります。

 

そのため、ビタミンB1が不足すると、体内のエネルギー不足の状態=脚気という病態にもつながります。

 

ビタミンB1欠乏症状=脚気・代謝性アシドーシスとなるということです。

 

補足

 

ピルビン酸をアセチルCoAに変換するのは、好気的条件の基です。

 

嫌気的条件=酸素が十分に供給されない状態(ショックや低酸素血症、貧血など)でも、ピルビン酸が酸化されないため、乳酸が蓄積し、代謝性アシドーシスになります。

 

乳酸が増える=代謝性アシドーシス=ショック・低酸素血症・貧血・ビタミンB1欠乏などの状態が挙げられますので、合わせて覚えておくことが重要です。

 

まとめ

 

ビタミンB1は、ピルビン酸をアセチルCoAに変換するために必要なビタミンである。

 

ピルビン酸をアセチルCoAに変換できず、ピルビン酸は酸化されず、乳酸となる。

 

乳酸が蓄積することで代謝性アシドーシス、エネルギー不足となるため脚気となる。

 

ピルビン酸は酸素が十分に無い条件でも、酸化されずに乳酸に変換されてしますので、ショックや貧血、低酸素血症などでも代謝性アシドーシスとなる。

 

 

 

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回はホルモンの受容体が存在する場所が、細胞膜上にあるのか細胞質内にあるのか、という問いついて解説していきます。

 

例として、以下のような問題が出題されています。

 

【第108回午後27】

標的細胞の細胞膜に受容体があるのはどれか。

  1. 1. 男性ホルモン
  2. 2. 甲状腺ホルモン
  3. 3. 糖質コルチコイド
  4. 4. 甲状腺刺激ホルモン

 

今後も、「受容体が細胞膜上にあるのはどれか」というような問題が出題される可能性があるので、しっかり区別して覚えておきましょう。

 

上の問題の意図が分かるように解説していきます。

 

受容体が存在する場所を決める要因

 

受容体が存在する場所は、脂溶性ホルモンか水溶性ホルモンかによって区別されています。

 

細胞膜はリン脂質二重構造となっており、脂溶性の物質は細胞の中に入ることができます。

 

つまり、脂溶性のホルモンは細胞の中に入ることができるので、脂溶性ホルモンに対する受容体は、細胞質内にあります。

 

一方、水溶性のホルモンは細胞の中に入ることができません。

 

(油と水は分離して混ざりません)

 

そのため、水溶性ホルモンに対する受容体は、細胞膜上にあります。

 

受容体の場所を覚える上で、まずは脂溶性ホルモンの受容体は細胞質内にあり、水溶性ホルモンは細胞膜上にあるということを覚えておきましょう。

 

脂溶性ホルモンに分類されるホルモン

 

脂溶性ホルモンに分類されるホルモンは、大きく分けて3種類あります。

 

①副腎皮質ホルモン

②性腺ホルモン

③甲状腺ホルモン

 

つまり、3つに該当するホルモンの受容体は、細胞質内にあるということです。

 

①副腎皮質ホルモン

 

①コルチゾール(糖質コルチコイド)

②アルドステロン

③アンドロゲン

 

※アンドロゲンは副腎皮質ホルモンであり、性腺ホルモンにも属します。

 

性腺ホルモン

 

①エストロゲン

②プロゲステロン

③アンドロゲン

 

甲状腺ホルモン

 

①T3:トリヨードサイロニン

②T4:サイロキシン

 

水溶性ホルモンとは

 

上記の脂溶性ホルモン以外は全て水溶性ホルモンに分類されます。

 

水溶性ホルモンが多いため、脂溶性ホルモンを覚えておくようにしましょう。

 

まとめ

 

ホルモンの受容体が存在する場所を決める要因は、そのホルモンが細胞膜を通過できるかどうかがポイントになる。

細胞膜を通過できるホルモンであれば、受容体は細胞質内に受容体がある。

細胞膜を通過できるホルモン=脂溶性ホルモン

脂溶性ホルモン=甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、性腺ホルモン

①コルチゾール

②アルドステロン

③アンドロゲン

④エストロゲン

⑤プロゲステロン

⑥T3:トリヨードサイロニン

⑦T4:サイロキシン

 

※よって、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、性腺ホルモンに該当する上記の7種のホルモンの受容体は細胞質内にある。

 

細胞膜を通過できないホルモンであれば、受容体は細胞膜上に受容体がある。

細胞膜を通過できないホルモン=水溶性ホルモン

水溶性ホルモンは数が多いので、脂溶性ホルモン以外のホルモンと覚えておく。

 

丸暗記ではなく、なぜ受容体の場所が違うのか、理論も合わせて暗記するようにしましょう。

 

【第108回午後27】

標的細胞の細胞膜に受容体があるのはどれか。

  1. 1. 男性ホルモン
  2. 2. 甲状腺ホルモン
  3. 3. 糖質コルチコイド
  4. 4. 甲状腺刺激ホルモン

 

細胞膜上に受容体がある=細胞膜を通り抜けできない水溶性ホルモンを選択する

 

解答:4

 

男性ホルモン、甲状腺ホルモン、糖質コルチコイドは脂溶性ホルモンです。

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、糖尿病とケトアシドーシス ~ケトン体産生のメカニズムについて~です。

 

代謝性アシドーシスの原因として、糖尿病によるケトアシドーシスを選択肢とする問題がよく出題されています。

 

今回は丸覚えではなく、メカニズムの部分を少し深堀りしていきたいと思います。

 

糖尿病の原因を簡単におさらい

 

糖尿病の定義は、インスリンの作用不足によって引き起こされる、糖質代謝を主とする種々の代謝異常を起こす疾患です。

 

簡単に言うと、インスリンの作用不足により、細胞内に糖を取り込むことができず、血中に糖が残ることで高血糖となり、そのまま尿糖となって排泄されてしまう病気です。

 

だから、糖尿病という名称になっています。

 

糖尿病の症状を簡単におさらい

 

①インスリンの作用不足により、高血糖になります。

 

②高血糖になることで、糖度の高い尿(浸透圧の高い尿)が生成されてしまい、尿細管での再吸収ができなくなることで、多尿となる。

 

③多尿となることで、脱水となり、口渇、多飲となる。

 

①②③から高血糖により、尿糖、多尿、口渇、多飲という症状が出現します。

 

糖尿病でケトアシドーシスになる理由

 

何故、糖尿病でケトアシドーシスの原因物質であるケトン体が産生されるのかを見ていきます。

 

①インスリンの作用不足により、細胞内に糖を取り込むことができない。

 

②細胞内は栄養不足になるため、異化が亢進する。また、細胞の栄養不足により、全身の倦怠感が出現する。

 

※異化とは、脂肪や筋肉を分解し、エネルギーを産生することです。

口から食物を取り入れたとしても、インスリンが無い状態だと、血中の糖を細胞内に取り込むことができません

細胞は栄養源となる糖が無く、飢餓状態と同じになるため、体内にある脂肪や筋肉を分解して、どうにかエネルギーを産生しようとしています。

これが異化亢進の状態です。

 

③脂肪や筋肉を分解するため、体重減少が起こる。

 

④脂肪を分解し、エネルギーを産生する過程が亢進するため、代謝産物であるケトン体が過剰に産生される。

 

⑤糖尿病ケトアシドーシスとなり、昏睡状態となる。

 

(糖尿病ケトアシドーシスは特に1型糖尿病の患者の昏睡の原因として多い)

 

①~⑤より、エネルギー不足の異化が亢進することにより、体重減少や全身倦怠感、糖尿病ケトアシドーシス、昏睡といった症状が出現します。

 

まとめ

 

糖尿病はインスリンの作用不足により、血中の糖質を細胞内に取り込むことができず、細胞内はエネルギー不足となる。

 

(※血中は高血糖、細胞内は飢餓状態)

 

血中は高血糖のため、尿糖、多尿、口渇、多飲が出現する。

 

細胞内は飢餓状態のため、異化が亢進し、体重減少、全身倦怠感、ケトアシドーシス、昏睡が出現する。

 

糖尿病の症状は、尿糖、多尿、口渇、多飲、体重減少、全身倦怠感、ケトアシドーシス、昏睡と丸暗記するのではなく、糖尿病のメカニズムを理解しながら、出現する症状を覚えていきましょう。

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