こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、神経伝達物質の種類と特徴 ~アセチルコリンとノルアドレナリン~です。

 

神経伝達物質は目に見えない上に、働きも様々で分かりにくい分野です。

 

神経伝達物質の種類は多いですが、国家試験に出題されるものは主要なものだけですので、全体を把握しつつ、主要なものの働きを覚えられるようにまとめました。

 

神経伝達物質の種類

 

国家試験で問われたことのある神経伝達物質は、以下の6種類です。

 

①アセチルコリン

②ノルアドレナリン(とアドレナリン)

③ドパミン

④セロトニン

⑤GABA

⑥グルタミン酸

 

頻出はアセチルコリンとノルアドレナリンなので、この2種は最後に解説します。

 

⑤GABAと⑥グルタミン酸:脳内でニューロンの働きに関与する

 

⑤GABAは最近テレビなどでも耳にする言葉かと思います。

 

働きは、中枢神経系(脳)で、ニューロンの興奮を抑制することです。

 

そのため、GABAをとることで、身体を落ち着かせることができるといわれています。

 

逆に、⑥グルタミン酸は、中枢神経系で、ニューロンを興奮させる作用があります。

 

④セロトニン:幸せホルモン

 

セロトニンは幸せホルモンと呼ばれているものです。

 

気分を落ち着かせる作用などがありますので、セロトニンが不足することでうつ症状になると言われています。

 

脳内でのセロトニンの再取り込みを阻害する薬が、抗うつ薬として使われています。(SSRI、SNRIなど)

 

③ドパミン:脳内報酬系の活性

 

ドパミンは、何かを達成したときに快く感じる要因となる神経伝達物質です。

 

中脳黒質から産生され、中枢神経系(脳内)作用します。

 

③〜⑥を問う問題は、あまり無いかと思いますが、予備知識として覚えておいてください。

 

①アセチルコリンと②ノルアドレナリンの違い

 

神経伝達物質の問題では、①アセチルコリンと②ノルアドレナリンが頻出です。

 

問題のポイントとなるのは以下の部分です

 

①アセチルコリンは副交感神経終末運動神経終末での神経伝達物質であり、

 

②ノルアドレナリンは交感神経終末での神経伝達物質であるということです。

 

上記の特徴を言い換えると、

 

①アセチルコリンは、副交感神経の興奮によって収縮する筋肉運動神経に支配される骨格筋を支配しているということです。

 

一方、②ノルアドレナリンは、交感神経の興奮によって収縮する筋肉を支配しています。

 

支配する筋肉についての問題が出題されるのは、この部分を理解できているかを問いています。以下のような問題です。

 

問. アセチルコリンで収縮するのはどれか。

 

  1. 1.心筋
  2. 2.排尿筋
  3. 3.腓腹筋
  4. 4.立毛筋
  5. 5.瞳孔散大筋

 

アセチルコリンで収縮するのは、副交感神経の興奮によって収縮する筋肉運動神経に支配される骨格筋を選ばなければなりません。

 

まず一つ目は、3.腓腹筋です。

 

これは骨格筋ということで選びます。なんとなく理解しやすいかと思います。

 

次に問題となるのは、副交感神経の興奮で収縮する筋肉は何かを理解しておくことが必要です。

 

交感神経と副交感神経の違い

 

交感神経と副交感神経を簡単に説明すると、両者の違いは以下のようになります。

 

交感神経が興奮することで起こる身体の反応は、瞳孔散大、気管支拡張、脈拍増加、排尿筋の弛緩(畜尿)、立毛筋の収縮などです。

 

副交感神経が興奮することで起こる身体の反応は、瞳孔縮小、気管支収縮、脈拍低下、排尿筋の収縮(排尿)など交感神経と反対の反応が起こります。

 

つまり、アセチルコリンで収縮する筋肉=副交感神経の興奮で起こる身体の反応(収縮する筋肉)排尿筋の収縮や瞳孔を収縮させる瞳孔括約筋になります。

 

選択肢の正解は、2.排尿筋となります。

 

(瞳孔散大させる瞳孔散大筋や立毛筋は、交感神経支配の筋肉となり、ノルアドレナリンの働きで収縮します。)

 

アセチルコリンとノルアドレナリンの働きをしっかりと理解して覚えることが大切です。

 

②ノルアドレナリンとアドレナリンの違い

 

最後に、ノルアドレナリンとアドレナリンの違いについてです。

 

どちらもカテコールアミンであり、作用など明確には区別して明記されていませんので、そこまで深く追い求める必要は無い部分かと思いますが、気になる方も多いので、簡単に説明します。

 

簡単に区分すると、アドレナリンはホルモン(兼神経伝達物質)、ノルアドレナリンはホルモン+神経伝達物質となり、アドレナリンの方が作用する範囲が狭いです。

 

基本的に、アドレナリンは副腎髄質ホルモンで血圧を上昇する作用などを持ちますが、血液脳関門を通過できないため、脳など中枢神経系では働きません

 

ノルアドレナリンは、副腎髄質からも産生されますが、交感神経節でも産生される神経伝達物質でもあるので、中枢神経系でも働きます。(そのため、精神症状にも関わってきます。)

 

まとめると、産生場所の違いにより、作用範囲が少し異なるが、作用に大きな差は無いと考えて良いかと思います。

 

結局は、ストレスなどを感じると、自律神経が刺激され、アドレナリンやノルアドレナリンが放出されるため、血圧上昇、不安、恐怖などの身体症状が起こります。

 

まとめ

 

神経伝達物質は、6種類程度あるが、ポイントはアセチルコリンとノルアドレナリン。

 

①アセチルコリンは副交感神経終末運動神経終末で活躍する神経伝達物質である。

 

②ノルアドレナリンは交感神経終末で活躍する神経伝達物質である。

 

アセチルコリンで収縮する筋肉、ノルアドレナリンで収縮する筋肉が分かるために・・

 

交感神経や副交感神経が興奮した時に起こる身体反応を覚えておくことが重要である。

 

アセチルコリンを止める薬が抗コリン薬・・と薬剤の話にもつながってきますので、難しいですが、しっかりと理解しましょう。

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こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、小児の発達過程について、解説していきます。

 

小児の発達過程というと、モラトリアム、ギャングエイジ、心理的離乳、分離不安・・、といった用語が並べられます。

 

その中に、空の巣症候群や青い鳥症候群など、似ていそうな用語も並べてくるので、毛嫌いしてしまいつつある部分です。

 

小児看護の国試対策のポイントとしては、ごちゃごちゃとすべてを丸覚えしようとするのではなく、一つ一つを整理しながら、小児の成長段階も踏まえながら、ストーリーにしながら、覚えていくことになります。

 

分離不安:生後6ヶ月〜 人見知りの原因

 

数ある用語の中で、最初に出てくるキーワード:分離不安

 

分離不安とは、基本的に母親と離れ離れになることを不安に思う状態です。

 

母親などなじみのある人と、見知らぬ人との区別がつくようになり、なじみのある人と離れ離れになることを恐れるようになるため、人見知りや後追いが始まります。

 

生後6ヶ月頃から始まるというのも重要なポイントです。

 

ギャングエイジ:学童期 〜徒党時代〜

 

ギャングエイジとは、小学校3-4年生にみられる、反抗期のようなものです。

 

子供同士だけで徒党を組んで、親や先生にも反抗し、反抗的な言動がみられたりします。

 

学級崩壊に陥りやすい学年でもあり、ギャングエイジは親や先生にとっては厄介な時期ですが、正常な成長発達過程を辿っていると考え、見守ることが大事な時期でもあります。

 

心理的離乳:思春期におけるアンビバレントな感情

 

心理的離乳とは、思春期に親への依存状態から抜け出し、心理的に自立しようとすることを指します。

 

その一方で、これまでどおり親への依存を保っておきたいという気持ちもあります。

 

その両方の感情をもつことを両価性(アンビバレント)な感情を持つと表現されます。

 

親に干渉されたくないと思いつつも、経済面や様々な面では親の援助を受けたいという複雑な感情を持つという、これも正常な子どもの発達なので、見守ってあげることが大事です。

 

思春期と青年期の違い

 

思春期と青年期は時期的に重複しており、分かりづらい部分です。

 

基本的には、青年期の方が広い概念で、11歳〜20歳(大学卒業くらいまで)を指します。

 

その青年期の初期、11〜14歳(中学生くらい)を思春期と呼びます。

 

モラトリアム :青年期の「成人までの猶予期間」

 

モラトリアムは、エリクソンが提唱した発達心理学の用語なので、覚えているという方も多いかと思います。

 

子どもと大人の境界で、大人の領域に踏み込めず、うろうろとしている状態です。

 

高校生〜大学生〜社会人初期の人々がここに該当し、自己を探し求めています。

 

青い鳥症候群

 

青い鳥症候群とは、現実の自分を受け入れられず、自分にはもっと力があり、能力を発揮できる場所があるはずと、理想の職場を探し求めるような状態を指します。

 

自我を探し求めているモラトリアムとよく似ている概念です。

 

違いとしては、青い鳥症候群は自分の能力が発揮できない原因が職場などの環境にあるとし、転職などを繰り返してしまう、他力本願的な状態にあるということです。

 

自分に原因が無いと思いがちであるため、自分自身が成長できず、環境は好転しないまま、うつ病に移行してしまうこともあります。

 

空の巣症候群:子どもが巣立った後の母に見られる

 

こちらも同じような名称な症候群ですが、小児成長発達には分類されないものです。

 

空の巣症候群は、子どもが結婚などで巣立ってしまい、巣の中(家の中)が空っぽになってしまった状態になり、一種の喪失体験のようなものを感じている状態です。

 

子育てを生きがいとしていた主婦に多く見られます。

 

看護師国家試験過去問

 

以下のように、似た概念が並べて出題されます。

 

Q. 発達段階と心の健康問題の組合せで最も関連が強いのはどれか。
1. 幼児期 ― 摂食障害
2. 青年期 ― 分離不安
3. 成人期 ― アルコール依存症
4. 老年期 ― 青い鳥症候群

 

解答 3

 

分離不安は人見知りの原因、青い鳥症候群は、青年期の若者が自分の居場所を探し求めている時期です。

 

アルコール依存は、飲酒ができる成人期〜くらいに関連が強いです。

 

まとめ

 

ここで挙げたもの以外にも似た概念はありますが、重要なものを確実に覚えることが重要になります。

 

・分離不安:人見知りの原因=6ヶ月くらい

・ギャングエイジ:学童期の徒党時代=小3-4

・心理的離乳:思春期の中学生くらい

・モラトリアム:青年期

 

・青い鳥症候群:青年期〜「自分の居場所を求めて飛び回る」

・空の巣症候群:子どもが巣立った後の喪失感

 

用語と簡単な特徴を一括りにして、覚えていきましょう。

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