こんにちは、講師のサキです。
今回は、国家試験に頻出問題の酸塩基平衡について解説します。
酸塩基平衡、アシドーシス、アルカローシスという言葉だけで難しく感じる方もいます。
しかし、実際は想像以上に簡単なので、苦手意識を持たずに、重要なポイントをしっかりと覚えていきましょう。
酸塩基平衡とは
酸塩基平衡とは、酸性とアルカリ性のバランスを保とうとする仕組みのことです。
体内のpHは7.4±0.05が正常値です。
しかし、体内の細胞の代謝(食べたご飯を消化吸収する過程など)によって有害な酸性物質の水素イオン(H+)や二酸化炭素(CO2)が血液中に放出されますので、体は常に酸性に傾こうとしています。
それを、肺と腎臓が協力しながら、水素イオンや二酸化炭素を体外に排出しています。
酸塩基平衡に関与しているのは、肺と腎臓となりますので、必ず覚えておいて下さい。
そもそもの酸塩基平衡の考え方をもう少し知りたい方はこちらもどうぞ。
呼吸性アシドーシスとアルカローシス
その中でも、肺(PaCO2)が関与しているものが呼吸性〇〇と呼ばれます。
PaCO2とは、血中の二酸化炭素分圧のことです。
(※Ⅰ型呼吸不全とⅡ型呼吸不全の学習でよく出題されますので、覚えておいて下さい。)
PaCO2が増加すると酸性(アシドーシス)になり、PaCO2が減少するとアルカリ性(アルカローシス)になります。
PaCO2が高くなるのは、呼吸不全(COPD、喘息、肺炎、肺がん・・etc)のある患者で、様々な原因疾患があります。
一方、PaCO2が減少するのは、過換気症候群しかありません。
二酸化炭素を無くす方法は無理に呼吸して、二酸化炭素を吐き出すくらいしか無いからです。
◎呼吸性アルカローシス=過呼吸症候群をまずはしっかりと覚えましょう。
↓
○呼吸性アシドーシス=呼吸不全を引き起こす疾患(COPD、喘息、肺炎、肺がん・・etc)はすべて該当すると覚えてください。
過換気症候群になるとテタニー症状が出ます。その機序に関してはこちらの記事を参照してください。
代謝性アシドーシスとアルカローシス
代謝性には、重炭酸イオン(HCO3-)と水素イオン(H+)が主に関与します。
一番難問なのが、代謝性アシドーシスなので、まずは代謝性アルカローシスから覚えていくのが無難です。
先述のとおり、体内はアシドーシスになろうとしているので、アルカローシスには無理しないとなりません。
嘔吐は胃酸(H+などの酸性物質)を無理に排出するので、アルカリ性に傾き、代謝性アルカローシスとなります。
(利尿薬を多量に使用すると、無理に酸性物質などを多く排出させるので、利尿薬の投与でも代謝性アルカローシスになることがあります。)
そして最後に代謝性アシドーシスです。
代謝性アシドーシスはH+が増加する以外に原因があるため、しっかり覚えていきましょう。
一番シンプルなのは、腎不全です。
腎機能の悪化により、腎臓で水素イオンを排出できないため、酸性に傾き、代謝性アシドーシスになるという機序です。
次に、下痢です。
高度の下痢が続くと、腸液が体外に多量に排出されてしまいます。
腸液には、重炭酸イオン(HCO3-)などのアルカリ性物質が多く含まれ、それが体外に排出されます。
その結果、体内は酸性に傾き、代謝性アシドーシスとなります。
代謝性アシドーシスの難問:ケトン体と乳酸
H+とHCO3-以外にも、代謝されることで出現する酸性の物質があります。
国試に出題されるのは、ケトン体と乳酸です。
酸性の物質=ケトン体と乳酸が貯留することでもアシドーシスになります。
(ケトアシドーシス、乳酸アシドーシスとも呼ばれます)
ケトアシドーシス
糖尿病や飢餓状態に陥った場合、体内の細胞のエネルギーが枯渇します。
糖尿病の場合は、インスリンが不足するため、血中にグルコースがあったとしても細胞内に取り込むことができません。
結果、細胞からすると飢餓状態と同じで、細胞はエネルギー不足となります。
そのエネルギー不足を補うため、体内にある脂肪を分解し、エネルギーを生み出しますが、その過程でケトン体が生成されます。
糖尿病や飢餓状態にある人は、ケトアシドーシス(=代謝性アシドーシス)となる可能性がありますので、必ず覚えておいてください。
糖尿病とケトアシドーシスの関係については、こちらの記事もどうぞ。
乳酸アシドーシス
ショックなどの全身の循環不全が原因となり、乳酸が溜まる場合に乳酸アシドーシスとなります。
循環不全のため、細胞は酸素不足の状態のまま、エネルギー代謝をしようとしますが、その結果、乳酸は生成されます。
(嫌気性代謝でグルコースを代謝した場合と解剖生理では説明されますが、ここでは深くは追及しません)
要は、ショック状態などの全身状態が悪い人は、酸素不足のまま無理にエネルギーを生成しようとするため、乳酸が過剰に生成され、乳酸アシドーシス(=代謝性アシドーシス)になる可能性があるということです。
最終問題:代償機構
酸塩基平衡の最終問題は代償機構です。
CO2+H2O ⇄ H2CO3 ⇄ H+ + HCO3-
こちらの式を理解して解く問題も出題されることがあります。
呼吸性アシドーシス=呼吸不全などにより、CO2が増えている状態でしたね。
CO2+H2O ⇒ H2CO3 ⇒ H+ + HCO3-
そのため、CO2を減らそうと代償機構が働き、双方向の⇄が『→』へ強く動きます。
CO2+H2O ⇒ H2CO3 ⇒ H+ + HCO3-
H+ + HCO3-の量が増える→腎臓でのH+の排泄量を増やし、酸性になるのを防ぐ。
このように、肺が悪いと腎臓が助けるということを「代償機構が働く」と表現します。
『代償』を理解できれば、酸塩基平衡は完璧に解けると思いますので、何度も繰り返し意味を読み込んでみてください。
(簡単に解説しましたが、とても難しい話です。)
質問も受け付けていますので、お気軽にぜひどうぞ。
まとめ
国家試験対策としては、身体で生じにくいアルカローシスから覚える。
次に、呼吸性アシドーシス、最後に代謝性アシドーシスという順に覚える。
○呼吸性アルカローシス=過換気症候群
○呼吸性アシドーシス=呼吸不全全般(COPD、喘息、肺炎など)
○代謝性アルカローシス=嘔吐
◉代謝性アシドーシス=難しい
⇒下痢、腎不全、糖尿病(ケトアシドーシス)、ショック(乳酸アシドーシス)
難しい範囲ですが、頻出問題であり得点アップにもつながります。
苦手意識を持たずにしっかりと理解していきましょう。
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