こんにちは、講師のサキです。

 

今回は年齢調整死亡率と粗死亡率についてです。

 

年齢調整死亡率と粗死亡率、どちらも死亡率ですが、少々意味合いが違います。

 

看護師のレビューブックなどにも記載されていますが、かなり簡略化されているため、その意味がわからず、なんとなくで進んでいる方もいるかと思います。

 

そういった問題を解消するために、この記事では年齢調整死亡率の意味合いを説明していきます。

 

粗死亡率の考え方(令和4年の日本の死亡者数と死亡率)

 

令和4年の日本の死亡者数は、約157万人です。

 

令和4年の日本の総人口は、1億2,495万人です。

 

これらの指標から、粗死亡率は計算することができます(年央人口で計算するため、計算の答えに若干の誤差があります)。

 

粗死亡率の計算方法

 

157万人÷1億2,495万人×1,000=12.9(人口千対)

 

つまり、日本の総人口と全死亡数から計算されたものが粗死亡率となります。

 

人口千対というのは、日本の総人口が1000人だった場合、死亡数は12.9人となるということを意味しています。

 

ちなみに、出生率も同様の計算ができます。

 

出生率の計算方法

 

令和4年の日本の出生数は、約77万人となります。

 

出生率は、77万人÷1億2,495万人×1000=6.3(人口千対)

 

日本の人口が1,000人だった場合、出生数は6,3人となることを意味しています。

 

令和4年の死亡数は157万人、出生数は77万人、つまり、令和4年の日本では、80万人もの人口減少が起きています。

 

日本では少子高齢化が大きな問題となっています。

 

 

年齢調整死亡率とは

 

粗死亡率の計算は先述した通り、

 

死亡者数÷日本の総人口×1000となります。

 

日本では高齢化が進んでいる影響で、死亡者数は毎年増加傾向にあります。

 

また、死亡者数の増加に加え、出生数は減少傾向にあるため、日本の総人口は減少傾向にあり、粗死亡率は年々上昇しています。

 

そこで、高齢化の影響を排除するために活用されるのが年齢調整死亡率になります。

 

年齢調整死亡率では、単純に死亡者数÷総人口という計算をするのではなく、

年代ごとの死亡率を算出し、その各年代の死亡率を平成27年の高齢化が進んでいない人口に当てはめて死亡率を計算してみる、という考え方になります。

 

年齢調整をして死亡率を算出してみると、男性では14.4、女性では7.9(人口千対)となります。

 

年齢調整死亡率の特徴と計算方法

 

先述しているように、年齢調整死亡率では、年齢構成が異なる人口集団の死亡率を、年齢構成の影響を取り除いて比較することができます。

 

例として以下のようなA村とB町があったとします。

 

A村    人口   死亡数

0~14才  5000人   5人

15~64才  20000人  20人

65才以上 15000人  150人

合計   40000人  175人

 

A村の粗死亡率:175÷40000×1000=4.375(人口千対)

 

B町    人口   死亡数

0~14才  10000人  10人

15~64才  25000人  25人

65才以上 5000人    100人

合計   40000人  135人

 

B町の粗死亡率:135÷40000×1000=3.375(人口千対)

 

上記の結果を比較すると、A村の方が粗死亡率は高くなります。

 

年齢調整死亡率の計算方法

 

A村とB町では年齢構成が違い、直接死亡率を比較することは難しいため、以下のようなC市というモデルを使って比較します。

 

C市    人口

0~14才  15000人

15~64才  55000人

65才以上 30000人

合計   100000人

 

 

まずはA村の各年代の死亡率を算出し、C市の人口に当てはめて考えてみます。

 

A村    人口   死亡数  死亡率

0~14才  5000人   5人   0.001

15~64才  20000人  20人    0.001

65才以上 15000人  150人   0.01

合計   40000人  175人

 

A村の死亡率をC市のモデル人口にあてはめると、各年代の死亡数が以下のように算出されます。

 

C市    人口   死亡率  死亡数

0~14才  15000人  0.001   15人

15~64才  55000人  0.001   55人

65才以上 30000人   0.01    300人

合計   100000人      370人

 

A村の年齢調整死亡率:370÷100000×1000=3.7(人口千対)となります。

 

 

次に、B町の各年代の死亡率を算出し、C市の人口に当てはめて考えます。

 

B町    人口   死亡率  死亡率

0~14才  10000人  10人   0.001

15~64才  25000人  25人   0.001

65才以上 5000人    100人    0.02

合計   40000人  135人

 

B町の死亡率をC市のモデル人口にあてはめると、各年代の死亡数が以下のように算出されます。

 

C市    人口   死亡率  死亡数

0~14才  15000人  0.001   15人

15~64才  55000人  0.001   55人

65才以上 30000人   0.02    600人

合計   100000人      670人

 

B町の年齢調整死亡率:670÷100000×1000=6.7(人口千対)

 

年齢調整死亡率で比較してみると、A村よりもB町の方が死亡率が高くなっていることが分かります。

 

このように、高齢化の影響を排除するために用いられるのが年齢調整死亡率になります。

 

結果を考察すると、A村は少子高齢化が進んできているが、元気な高齢者が多く、高齢者の死亡率は低い、と考えることができます。

 

まとめ

 

年齢調整死亡率では、年齢の影響を排除して、死亡率を算出することができる。

 

粗死亡率は、単純に総死亡数÷総人口(×1000)で算出することができる。

 

令和4年の日本の総人口は1億2495万人、死亡者数は157万人、出生数は77万人。

→死亡率は12.9、出生率は6.3(人口千対)。

 

看護師の国家試験では、計算までは出題されませんが、死亡者数や死亡率の数値などは暗記しておくことが重要です。

 

保健師の国家試験では、計算問題も出題範囲なので、計算方法や計算結果の意味も分かるようにしておくことが大事です。

 

 

 

カテゴリー
タグ