こんにちは、講師のサキです。
今回は、糖尿病とケトアシドーシス ~ケトン体産生のメカニズムについて~です。
代謝性アシドーシスの原因として、糖尿病によるケトアシドーシスを選択肢とする問題がよく出題されています。
今回は丸覚えではなく、メカニズムの部分を少し深堀りしていきたいと思います。
糖尿病の原因を簡単におさらい
糖尿病の定義は、インスリンの作用不足によって引き起こされる、糖質代謝を主とする種々の代謝異常を起こす疾患です。
簡単に言うと、インスリンの作用不足により、細胞内に糖を取り込むことができず、血中に糖が残ることで高血糖となり、そのまま尿糖となって排泄されてしまう病気です。
だから、糖尿病という名称になっています。
糖尿病の症状を簡単におさらい
①インスリンの作用不足により、高血糖になります。
②高血糖になることで、糖度の高い尿(浸透圧の高い尿)が生成されてしまい、尿細管での再吸収ができなくなることで、多尿となる。
③多尿となることで、脱水となり、口渇、多飲となる。
①②③から高血糖により、尿糖、多尿、口渇、多飲という症状が出現します。
糖尿病でケトアシドーシスになる理由
何故、糖尿病でケトアシドーシスの原因物質であるケトン体が産生されるのかを見ていきます。
①インスリンの作用不足により、細胞内に糖を取り込むことができない。
②細胞内は栄養不足になるため、異化が亢進する。また、細胞の栄養不足により、全身の倦怠感が出現する。
※異化とは、脂肪や筋肉を分解し、エネルギーを産生することです。
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口から食物を取り入れたとしても、インスリンが無い状態だと、血中の糖を細胞内に取り込むことができません。
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細胞は栄養源となる糖が無く、飢餓状態と同じになるため、体内にある脂肪や筋肉を分解して、どうにかエネルギーを産生しようとしています。
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これが異化亢進の状態です。
③脂肪や筋肉を分解するため、体重減少が起こる。
④脂肪を分解し、エネルギーを産生する過程が亢進するため、代謝産物であるケトン体が過剰に産生される。
⑤糖尿病ケトアシドーシスとなり、昏睡状態となる。
(糖尿病ケトアシドーシスは特に1型糖尿病の患者の昏睡の原因として多い)
①~⑤より、エネルギー不足の異化が亢進することにより、体重減少や全身倦怠感、糖尿病ケトアシドーシス、昏睡といった症状が出現します。
まとめ
糖尿病はインスリンの作用不足により、血中の糖質を細胞内に取り込むことができず、細胞内はエネルギー不足となる。
(※血中は高血糖、細胞内は飢餓状態)
血中は高血糖のため、尿糖、多尿、口渇、多飲が出現する。
細胞内は飢餓状態のため、異化が亢進し、体重減少、全身倦怠感、ケトアシドーシス、昏睡が出現する。
糖尿病の症状は、尿糖、多尿、口渇、多飲、体重減少、全身倦怠感、ケトアシドーシス、昏睡と丸暗記するのではなく、糖尿病のメカニズムを理解しながら、出現する症状を覚えていきましょう。