こんにちは、講師のサキです。
今回は、【薬理学】向精神薬の種類と特徴 〜抗精神病薬と抗うつ薬の副作用が頻出〜です。
向精神薬には、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、抗不安薬、睡眠薬、抗てんかん薬、抗認知症薬などがあります。
精神に効く(向かう)薬剤のことを、向精神薬と一般に呼ばれており、向精神薬には多くの種類があります。
向精神薬は、種類が多く、色々と覚えると混乱しますので、優先度の高いものだけをまずは覚え、知識を広げていくことをおすすめします。
今回は、抗精神病薬と抗うつ薬を取り上げて解説していきます。
抗精神病薬の種類と特徴と副作用
向精神薬の中で圧倒的に出題されるのが、抗精神病薬です。
抗精神病薬は主として、統合失調症の治療に用いられる薬で、ドパミンの活動を抑えることにより、幻覚や妄想を抑え、鎮静作用を発揮します。
抗精神病薬は定型抗精神病薬(旧型)と非定型抗精神病薬(新型)に大きく分けられる
非定型抗精神病薬(新型)の方が、副作用が少なく、陽性症状だけでなく陰性症状にも効くという利点から、治療の中心となっています。
定型抗精神病薬:クロルプロマジン、ハロペリドールなど
非定型抗精神病薬:リスペリドン、オランザピンなど
(あまり薬剤の名称は問われることはありません)
抗精神病薬の副作用
※副作用は必ず覚えておきましょう。
錐体外路症状(EPS)、自律神経症状、高プロラクチン血症による乳汁分泌や性機能障害、眠気、悪性症候群、高血糖、体重増加などがあります。
錐体外路症状や高プロラクチン血症は定型抗精神病薬、高血糖や体重増加は非定型抗精神病薬で起こりやすい。
そのため、糖尿病患者の場合には非定型抗精神病薬を使用できないこともあります。
錐体外路症状
パーキンソン症候群、アカシジア、ジストニア、ジスキネジアなどの症状の総称です。
①パーキンソン症候群:安静時振戦、無動、筋強剛、姿勢保持障害など
②アカシジア:静座不能。じっとできず動き回る。
③ジストニア:異常な筋緊張により奇妙な姿勢となる
④ジスキネジア:咀嚼用運動、舌の突出、顔をしかめるなど
自律神経症状:抗コリン作用
口渇、排尿困難、便秘などの抗コリン作用が出現します。
特に口渇により、多飲となり、水中毒となりやすいのも特徴です。
(抗精神病薬の長期投与による抗利尿ホルモン不適合分泌症候群も加わり)
水中毒により、低Na血症となり、頭痛、易疲労感、食欲不振などもみられます。
悪性症候群
抗精神病薬などの向精神薬の服用開始時や増減、中断によって発症します。
症状は、先述した錐体外路症状や自律神経症状に加え、高熱などが出現するのが特徴です。
抗うつ薬の種類と副作用
もうひとつ頻出なのが抗うつ薬になります。
抗うつ薬はその名の通り、うつ病の患者に投薬されます。
目的は、セロトニンやノルアドレナリン神経の機能を正常化することです。
抗うつ薬の種類と特徴
抗うつ薬には、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、SNRI、NaSSAなどの種類があります。
(三環系や四環系は、見た目の化学的構造からその名称となっています。)
薬剤の基本性能は、セロトニンやノルアドレナリンを体内へ再取り込みすることを阻害することで、神経の機能を改善しようとします。
三環系や四環系は、セロトニンやノルアドレナリン以外の神経物質にも作用し、効果が強いため、副作用も強いです。
一方、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、セロトニンだけの再取り込みを阻害するため、副作用が少なく、治療の第一選択薬となっています。
SNRIやNaSSAもそれぞれ特徴はあります。名前だけは覚えておいてください。
※SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
※NaSSA:ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬
抗うつ薬の副作用:セロトニン症候群
SSRIの副作用として、セロトニン症候群があります。
脳内のセロトニン活性の過剰により、不安・焦燥、発熱、ミオクローヌスなどを生じます。
その他、消化器系の副作用(悪心・嘔吐・下痢)なども見られ、三環系抗うつ薬などは抗コリン作用による口渇、便秘、尿閉、起立性低血圧なども見られます。
まとめ
向精神薬の中で頻出なのは、抗精神病薬、次いで抗うつ薬。
抗精神病薬は定型と非定型に分けられ、現在は非定型が治療の中心である。
抗精神病薬の副作用は、錐体外路症状、自律神経症状、悪性症候群などである。
抗うつ薬は三環系と四環系、SSRI、SNRI、NaSSAなどがある。
セロトニン再取り込み阻害による、セロトニン症候群が副作用として頻出である。