こんにちは、講師のサキです。

 

今回は、心臓の刺激伝導系のしくみ 〜なぜ心臓は拍動するのか:洞房結節と自律神経作用〜について解説します。

 

心臓は、1分間に60-80回程度拍動していますが、無意識に拍動してくれています。

 

なぜ心臓は拍動しているのか、どのように拍動しているのか、そこで立ち止まってしまい、心臓の勉強に入れないという方も目にします。

 

今回は、そのような心臓の拍動に関する疑問を深堀りしていきます。

 

心臓の拍動には刺激伝導系が関与している

 

心臓が規則的なリズムで拍動できるのは、刺激伝導系という電気の流れ道が決まっているからです。

 

刺激伝導系は、洞結節→房室結節→ヒス束→左右脚→プルキンエ線維で構成されています。

 

刺激伝導系の心筋は収縮にほとんど関与しないため、特殊心筋と呼ばれます。

 

(収縮に関与する心筋は固有心筋と呼びます。)

 

なぜ心臓は拍動するのかという疑問の答えは、刺激伝導系の始まりである洞結節にありそうなので、洞結節を詳しく見ていきます。

 

洞結節はなぜ心拍動のリズムを刻むのか

 

洞結節の心筋細胞は、他からの刺激が無く、活動電位が自動的に発生し、心臓の収縮を行っています。

 

他の心筋細胞は洞結節からの電気刺激を受けて収縮しているので、洞結節だけが特殊中の特殊な心筋細胞になります。

 

要するに、洞結節は特殊中の特殊な心筋細胞なので、1分間に60回電気刺激を作り出すと設定されている、ということです。

 

また、洞結節は単調にリズムを刻んでいるのではなく、自律神経の影響を受け、拍動のリズムを変えています。

 

緊張した時など交感神経が優位な時は、1分間に80〜100回と設定が上がり、逆にリラックスした時など副交感神経が優位な時は、1分間に50回と設定が下がったりします。

 

心臓の洞結節は自律神経の影響を受け、拍動する回数を設定し、その回数分の電気信号を作り出しています。

 

どのように拍動は伝わるのか

 

次は洞結節で生じた電気信号がどのように刺激伝導系を伝わっていくかを説明します。

 

静止膜電位(細胞内は-70mVのマイナス荷電となっている)

 

心臓の静止時は、ポンプ機能により、陽イオンを細胞外に流出させるため、細胞内の方がマイナス荷電(-70mV)となっています。

 

刺激が無く、細胞内の方がマイナス荷電になっている状態を静止膜電位と呼びます。

 

チャネル・イオンなど、細胞膜の構造と機能についてはこちらの記事を参照ください。

 

 

 

洞結節から始まる活動電位

 

静止膜電位の状態は、細胞内の方が-70mVのマイナス荷電でしたね。

 

そんな中、洞結節からの電気刺激を受けると、細胞内と細胞外を隔てる細胞膜にあるNa+チャネルが開口します。

 

細胞内と細胞外の濃度勾配により、細胞外から細胞内にNa+イオンが一気に流入します。

 

すると、細胞内にNa+が増加するため、細胞内がプラス荷電にシフトします。

 

細胞内外の分極状態(電位差のある状態)が解消されるため、脱分極と呼びます。

 

その後、K+チャネルが開口し、濃度勾配に従って、細胞内のK+イオンが細胞外へ流出することで、再度細胞内がマイナス側にシフトします。

 

細胞内外が再度分極状態になるため、再分極と呼びます。

 

一連の流れが終わったら、再度洞結節からの電気刺激が起こり、脱分極→再分極が起こり、これが永遠に繰り返されています。

 

洞結節が自律神経の影響で設定した回数分、電気刺激を発生させ、刺激伝導系を電気刺激が流れていきます。

 

また、細胞が脱分極して再分極するまでの電位変化を活動電位と呼びます。

 

このままだと、細胞内にNa+イオンが、細胞外にK+イオンが増えていきそうです。

 

それをナトリウム-カリウムポンプが働き、濃度勾配に逆らって、細胞内にK+イオンを取り込み、細胞外にNa+イオンを流出させます。

 

そのため、元の膜電位の状態=細胞内にはK+が多い状態、細胞外にはNa+が多い状態を維持しておくことができます。

 

 

まとめ

 

なぜ心臓は拍動するのか?

 

①特殊心筋の洞結節が、自律神経の影響を受けながら、1分間に60-80回程度のリズムを刻み、電気刺激を送る。

 

②洞結節から電気刺激を受け取ると、細胞内にNa+イオンが流入し、脱分極が起こる。

 

③その後、K+イオンが細胞外へ入出し、再分極が起こる。

 

洞結節の刺激→脱分極→再分極の繰り返しで、心臓は収縮し、拍動し続けています。

 

 

 

 

 

 

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