こんにちは、講師のサキです。

 

今回は国家試験頻出問題、酸塩基平衡について丁寧に解説していきたいと思います。

 

よく出題される上、とにかく難しいと評判の問題で、受験生から毎年質問のある問題です。

 

確かに難しい問題ですが、根拠に基づいて考えると理解でき、理解できると点数は絶対に落とさない問題ですので、あきらめずに一つ一つ理解していくようにして下さい。

 

そもそも酸塩基平衡って何?

 

酸塩基平衡を一言で表すと、体内にある酸とアルカリのバランスをとる体の能力、のことです。

 

人間の体内には胃酸などの酸性のもの、腸液などのアルカリ性のもの、酸とアルカリどちらも存在します。

 

その体内(血中)の酸性・アルカリ性の状態を表すのがpHであり、正常値はpH=7.4±0.05となります。

 

pH=7.0が中性になるので、体内のpH=7.4は弱アルカリ性になります。

 

なぜ、pH=7.4なのか

 

体温を例にとると、人間の体温は36.5℃±0.5℃が正常値です。

 

これは、36.5℃が人間の代謝などに適しているからです。

 

pH=7.4が正常値の理由も同様で、人間の代謝(酵素の働きなど)に適しているため、pH=7.4をキープしようと体(肺と腎臓)がバランスをとっています。

 

(暑い・寒いという環境があっても、体温は36.5℃をキープしようとしますが、それと同様の考え方です)

 

pH=7.4が変動する理由

 

体温の場合は、外気温の変化や風邪を引いた場合などに体温が変動します。

 

pHの場合は、体内にある酸性物質の量により、pHが変動します。

 

酸性物質はなぜ体内で増えるのか(減るのか)

 

ヒトは、食事や酸素を取り込み、それらの酸素や栄養素は細胞内で代謝されます。

 

その細胞からは、CO2や酸性の代謝産物(塩酸や硫酸)が老廃物として排出されます。

 

まとめると、ヒトは栄養素や酸素を代謝すると、CO2などの酸性物質を血中に排出するということです。

 

そのため、ヒトは生きている以上、体は常に酸性に傾こうとしている状態にある、と考えて下さい。

 

酸性物質は肺と腎臓から排出される

 

代謝する度に排出される酸性物質をそのまま体内にとどめておくと、体内が酸性になってしまいます。

 

それを防ぐために、肺からCO2を排出したり、腎臓から酸性物質のH+(水素イオン)を排出したりしています。

 

この酸とアルカリの調節機構を酸塩基平衡と呼んでいます。

 

酸塩基平衡が崩れる=肺と腎臓に異常

 

今まで説明してきた酸とアルカリの調節機構が崩れるのは、酸性物質を調節するために重要な肺や腎臓に異常が起きた場合です。

 

肺や腎臓に異常が起きると、酸性物質を排出することができなくなるため、体内に酸性物質が残り、体内は酸性に傾いてしまいます。

 

この体内が酸性に傾いた状態をアシドーシス(acid=酸)と呼びます。

 

肺が原因(PaCO2の増加が原因)で引き起こされたアシドーシスを呼吸性アシドーシス、腎臓等が原因(H+などの酸性物質の増加)で引き起こされたアシドーシスを代謝性アシドーシスと定義されています。

 

呼吸性アシドーシスと代謝性アシドーシスの分類については、こちらの記事を参照下さい。

 

 

 

※アルカリ性=アルカローシスにはなりにくい

 

少し戻りますが、ヒトは生きている以上、体は常に酸性に傾こうとしている状態にあるということでしたね。

 

要は、アシドーシスにはなりやすい(酸性にはなりやすい)ですが、アルカローシスにはなりにくい(アルカリ性にはなりにくい)ということです。

 

代謝することで自然と体内に酸性物質が産生されるにも関わらず、それよりも多くの酸を体外に排出するしか方法が無いからです。

 

その過剰に酸を排出するための方法が2つあります。

 

①過換気症候群:CO2を過剰に排出すること(=酸性物質を喪失)。

 

→PaCO2の減少が原因となるため、呼吸性アルカローシスとなります。

 

②嘔吐による胃酸(H+)を過剰に排出すること(=酸性物質を喪失)。

 

→H+の減少が原因となるため、代謝性アルカローシスとなります。

 

アルカローシスにはなりにくく、アシドーシスにはなりやすいということを前提として暗記するようにして下さい。

 

覚えやすくするために、やや限定的に記載していますが、看護師国家試験の問題対策としては上記の2個がアルカローシスの原因と覚えておきましょう。

 

(臨床においても、アシドーシスが問題となることはあっても、アルカローシスが問題となることはほとんどありません。)

 

アルカローシスの詳細な内容についても、先程の記事を参照下さい。

 

まとめ

 

◉酸塩基平衡とは体内にある酸とアルカリのバランスをとる体の能力のこと

 

◉体内の酸性・アルカリ性の状態を表すのがpHであり、正常値はpH=7.4±0.05

 

◉pH=7.4が人間の代謝に適しているため肺と腎臓がpH=7.4をキープする

 

◉肺と腎臓に障害が起こると、酸と塩基のバランスが崩れ、アシドーシスやアルカローシスになる

 

アシドーシスやアルカローシスになる原因については、こちらの記事を参照下さい。

 

 

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